日記を見直す


  • 1.23:「ごちそうさま」の合掌。ボディランゲージの誕生。


  • 3.20:
    二足歩行の歩容の確立。

  • 3.21:
    「ジョージ」の音に反応し絵本を同定し、ノコノコと取りに行く。名詞の同定ができ、行動を生成するようになっている。




  • ニュートンの言葉
    を連想した 2006.4.16撮影(cf.4.19)
    4.6:
    (右利き、左利きの観察:未分化)


  • 4.23:
    「め」「はな」は発音できないけれど指差しで同定出来る。語彙は発話でははかれない。

  • 4.27:
    「ママを呼んできて。」「ママ」の位置の同定と、問題解決プロシージャの生成。

  • 5.3:
    (この時期、トイレに成功する例があったんだよなあ。)

  • 5.4:
    (いつのまに手当たり次第に口にする行動が消えたのだろう?)

  • 5.6:
    「くっく」。語の出始めの頃は、名詞が動詞として援用されるようだ。

  • 5.11
    面白いように気が散る。

  • 5.13:
    典侍、ボクのおしっこの世話をする。ロールプレイ(状況を解釈し、動作プロシージャを生成する)の誕生。

  • 5.16
    [省察]学習とは「受容」的な過程ではなく、「出力生成」の過程である。
    (「仕草」数とその組み合わせ数の爆発をメモしている。)

  • 5.18,
    5.21:
    ぬいぐるみをあやす。寝たふり。シミュレーションの誕生。記憶の再生と実行可能な動作の参照がうまくかみ合い始めたような感じ。ある程度の入出力がセットで見えるようになったので、 リバースエンジニアリング的な見方が出来るようになったのかな。

  • 5.22:
    脚立によじ登る


  • 5.25:
    [写真]読書の模倣

  • 6.3:
    [運動能力]屋内用の滑り台を逆向きに登った。

  • 6.9
    [運動能力]階段を2階まで自力で登った(監視付き)。

  • 6.13
    [言語]ボクの衣類を持って「パパ」という。人物と持ち物の対応付け。


  • 6.30
    [器用さ]ぶどうの皮を自力で剥いて食べる

  • 7.9
    [プロポーション]帽子を自力でかぶれるようになっている


  • 8.1
    [言語]簡単な2語文の生成はこの頃。「ぶー ない」

  • 8.8
    [運動能力]爪先立ち歩きがマイブーム


  • 8.27
    [器用さ]レゴの嵌め合わせ。あせもの薬の塗布。ゴムボールを片手で2個持つ。

  • 9.20
    [言語]複合名詞の生成。

  • 9.21
    (右利きか?)


  • 9.23
    [運動能力]階段を自力で下りる(監視付き)。

  • 9.24
    [言語]指示語「こ」「あ」の用例が出始める。

  • 10.2
    [器用さ]ビデオ再生関連の操作をおぼえた

  • 10.8
    [言語]「の(体言相当の助詞)」「かたい(形容詞)」

  • 10.14,
    10.19
    [器用さ]ボタン嵌めができた!

  • 10.14
    [言語]言語エクスプロージョンはこのころから。音写の能力が上がる。

  • 10.15
    [知恵]いすを動かし脚立として使うようになる

  • 10.19
    [言語]数詞を復唱した。つまり対象の無い「音」をバッファリングして再生した。
    発話できるようになって、しっかりしたフィードバック・ループが出来たのか。

  • 10.21
    [言語]復唱した語が語彙として定着するようになった。



  • 11.9
    10.28
    網梯子の上り下り達成。名詞定着までの入力数激減。

  • 10.29
    ブランコの立ちこぎ姿勢の維持

  • 10.31
    「の」が准体言から所有へと拡張された。付加、追加の助詞「も」。

  • 11.5
    この時点での語彙の記録。これ以降は名詞の採集を断念。

  • 11.7
    3語文[テーマ][ターゲット][用言]の生成「えび かわ とれた」

  • 11.8
    飽きずに遊ぶ

  • 11.11
    比較、形容詞の用法「典侍、ちいしゃいの」

  • 11.13
    ウソの誕生、たぶん葛藤とその解決。

  • 11.18
    曖昧表現「たぶん」

  • 11.20
    類似の指摘「みたい」


  • 11.28
    3語文、類似の指摘「ごはん まる みたい」

  • 12.4
    接続詞の誕生「しゃむいから しめて」

  • 12.9
    文章の生成「ぱぱ どうじょ。 いっても いいよ。」

  • 12.12
    呼びかけの「よ」「ティッシュここよ。」

  • 12.15
    様態「典侍 ねしょう(寝そう)」

  • 12.17
    簡単な受け応え、会話。

  • 12.19
    4語文、複文化、記憶の想起「かーか まんま たべに くるの」


面白がって発達を観察していたわけだが、学問的な観察の手法を知らないので、見落としていることも多いだろう。


驚いたのは、言語を支えているであろう様々な機能は、発話が生じる前に相当に形成、発達していることであった。言語機能の表現媒体として「行動」があるというのは新鮮な発見であった。二足歩行を獲得して、両手が空くことで、可能な空間移動と動作のバラエティが増えた。これが「大人の指示」と「典侍の行動」での応答という形でのコミュニケーションを可能にした。そのおかげで言語、状況の理解の能力が思った以上に成熟していることが判った。


指示への応答や、世話焼き/お手伝い行動の出現は、発話にかなり先行していた。たとえば1歳5ヶ月くらいの段階で、曾祖母をデイケアに送り出す際に、「腰の辺りに手を添えて身体を支えてあげる」「車いすの足載せをおろしてあげる」という行動は出ていた。つまり状況の理解やその状況に応じての必要な動作プロシージャの生成があった。これはノンバーバルな対象に対しても、状況を分節化して理解することと行動を分節化して組み合わせて生成することが出来ていたことを示している。


乳幼児の能力を見くびってはいけない。音声の単語へのパーシング、単語間の相関の検出、状況との比較参照のような機能は、刺激、入力が与えられるそばから自動的に動作しているように思われる。「理解」は十分に出来ていないかもしれないが、「理解しようとする脳の機能」は十分に動作しているのかもしれない。言うまでも無いが「出力」はとてもつたないので、「理解の程度」を適切に推測するのはとても難しいように思われる。


こどもに対しては、見くびることなく諭すように丁寧に語りかけるべきだろう。幼児といえども脳はあらゆるものを分節化して捉えようとするから、たとえば「目的」「理由」のようなパーツを含まない「指示」は脳に「不良設定問題(条件などが不足して答えをきちんと得られない問題)」を入力するような行為であって、脳の動作に余計な負担(多分、日常会話の意味での「フラストレーション」)を与えることになるのではないか。


言語を支える諸機能のうち「発話」に関する部分、すなわち音声の分節化された生成、聴取による発声機能へのフィードバック、文の生成と発話の部分は、言語の基本機能の発達の「最後のピース」であるように思われた。この「最後のピース」が発動することによって、言語機能が格段の発達を遂げた。