意見がまとまらないのでメモとして残す

以下のことを考えた「文脈」を書いていないので、誤解を招くだろう。あくまでも個人的な意見であり、メモである。意見としてまとまらないが、人の目に触れるところに置けば、ひょっとしたら何か意見をいただけるかもしれないという期待を持っているので、ここに書く。

  • 科学は「公正」「中立」か?


    科学的な分析には党派性は入らない。
    しかし、そこで出した結論が世間的には特定の党派なり主義主張を利することになることはあり得る。


    リスクを評価する場合、リスク分析の前提条件が変われば結論もそれに応じて変わる。
    二つの異なる前提をおいて、それぞれが科学的に妥当な推論、分析をして、
    異なる二つの科学的に妥当な結論が出たときに、
    意見の異なる二つの党派がそれぞれの結論を自党派のアジェンダの正当性を主張する根拠に使う、
    という状況は起こりえるだろう。


    これは科学的分析あるいは「科学的営み」の内部では解決のしようがない。


  • 吉川泰弘ならびに農水省を信頼できそうか?


    雑感328-2005.12.27「国産牛肉のPRを見て考える」(J. Nakanisi Home Page, 雑感326-330, 松永和紀blog経由で知る)によれば、国産牛肉の宣伝に出たという事実がある。これは特定の業界団体を利する行為ではないのか?


    少なくとも座長を任せてはいけないと思う。
    特定の党派の思惑からメンバーをガードし、
    メンバーの活動の自由を担保する役割があると思うからである。


    これは科学の問題ではなく、科学的活動という社会活動の一要素についての問題である、すなわち政治的、社会的な問題である。

  • 民主党議員は何を問題にしたのか?


    http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0118/171/17106050017029c.htmlより、民主党水岡俊一議員の発言


    ただいま議題となりました国家公務員任命につき同意を求めるの件について意見を申し述べます。

     言うまでもなく、食品安全委員会は、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行うべき機関です。しかしながら、政府が二〇〇五年十二月、米国産牛肉輸入再開を決定した際には、食品安全委員会は、科学的評価は困難だとしながらも、輸入再開に事実上お墨付きを与える内容の答申をまとめました。

     今回、食品安全委員会委員の候補者となっている吉川泰弘氏については、当時、食品安全委員会プリオン専門調査会座長として問題の答申をまとめた重大な責任があります。特に、その答申を出したことについて同専門調査会のメンバーの半数に当たる六人が辞任されるに至ったことを考えれば、民主党としては、同氏について同意することはできません。

     今後、食品安全委員会は原点に立ち返り、国民の健康と安全のため自らの職責を果たされるべきことを改めて申し上げ、意見表明とします。

     以上で意見表明を終わります。


    この発言より、いくつかのことを読み取ってみる。


    「輸入再開に事実上お墨付きを与える内容の答申」という発言から読み取れそうなこと


    • 「お墨付き(上位のエージェントの決済文書)」という言葉から、科学的評価を「揺るがせに出来ない権威」あるいは「最終結論」として捉えている。言い換えると科学への無条件の信頼を陰に表している。

       
      そして非常にアンビバレントなことだが、この文脈でこの語を持ち出すということは、「科学の結論がポリティカルな力学で左右される」という認識も示している。

    • 大雑把には委員会が「リスク評価」、農水省が「リスク管理」という役割分担をしていることが認識されていない。

      または

      「リスク評価」「リスク管理」の役割分担が、現実の政治の問題としては、実現されていない、つまり委員会の結論が「リスク管理」の部分までカバーしているという認識を示している。
  • 辞職した委員の一人はどのような意見を持っているのか?

    http://www.dpj.or.jp/news/?num=6505
    金子清俊の観点が述べられている:


    評価方法としては、飼料規制・実際に現場を調査することで得る特定危険部位の除去実態データ・全頭検査データの3点が不可欠な観点となると説明。

    本来、リスク評価とは不完全な現在のデータを前提条件として未来の状態を推定する作業であって、特定のデータが無くては評価できないという種類のものではないはずである。

    この記事が民主党のスタッフの編集を経たものであるということを割り引いて考えても、金子氏(あるいは民主党)のリスク評価の考え方はトンチンカンなものではないか?

  • あるジャーナリストの意見


    http://www.jimbo.tv/commentary/000141.php


    この記事中でも、委員会が「リスク評価」、農水省が「リスク管理」という分担が無いかのように書かれている。ジャーナリストの見解なので、取材を基にしたなんらかの政治的な実態を反映しているのだろう。
    俗に「審議会政治」と呼ばれる政策決定手法の一例として食品安全委員会の活動を捉えているようである。


    この記事の中にはリスクとベネフィットのトレード・オフという観点は無いという印象を受けた。なぜならゼロ・リスクを最大のベネフィットと考えているように思えたからである。