読書感想文:『計算とは何か』
- 作者: 新井紀子,新井 敏康,上野健爾
- 出版社/メーカー: 東京図書
- 発売日: 2009/10/07
- メディア: 単行本
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これは数理とは何かについての論考であり、小中高の算数、数学の授業で「語られること無く済まされてしまった数学的操作や思考の対象の基礎」を小中高の数学で学習する事項を用いてきちんと説明しようとする試みだ。
なるべく正確かつ簡潔で分かりやすく書こうとしている。「やさしい計算」の背後にある「難しい」問題、例えば「割り算の筆算が必ずできること」をやさしい(=高校までで学習する)計算と記法で理解しようとする試み。
こういうものが人間の知性とは何かを反省的に考える「教養としての数学」のひとつのモデルであり、文理を問わず大学1年生が身に着けるべき知識なのだろう。「高校の数学IIIまで学習して、難関大学の入試問題もそれなりに解けて、数学が分かったつもりになっている思い上がった旧帝大の新入生」みたいな人に勧めたい一冊。
これには「ε-δ」は載っていないけど、ε-δのイントロ(に出てくる実数の連続性噺)のひとつのあり方ではないかなと感じた。「ε-δ」の授業の冒頭で先生はこう言うべきではないか?
任意に与えられた2つの実数 a, b について、その大小を計算で決めることができるとは限らないのです。
ibid. p.173