知能機械の観察:3さいたんてい典侍、第1章「見上げる(前編)」

さて典侍がお年始から戻って、僕が彼女を風呂に入れようとしたとき、脱衣所の明かりが点かないので、そのことを義母さんに告げると「脱衣所の明かりは誰かが外しているよ」と答えが返ってきた。見ると確かに照明は外され、ソケットがむき出しになっている。ボクが典侍に「ありゃまあ、でんきがはずれとる」と告げると、典侍もまじまじと脱衣所の天井を見上げてボクに訊きかえす
「ぱぱは しらんかったん?」
「いま ばーばに いわれるまで きづかんかったよ」
すると典侍はじっと考え、ちょっとむずかしい顔をして一言
じつに おもしろい。 だったら、ままか じーじか ばーばか はずしたんじゃない。
典侍と舜は ちいさいから とどかんけん」
と言うや、ばーばのところへ歩いていって「ばーばが はずしたん?」と聞き込みを開始した。ばーばは「ちがうよ」と答えたので、典侍の表情はさらにむずかしくなっていった…。

さてこのような会話が何回か繰り返され、彼女の念押しが進むうちに、義母さんが2階から明かりを取ってきて点けたので、僕らはお風呂に入ったのだ。「後編」が出来るかどうかは典侍の関心次第。