歴史と学生と想像力
学生と「尖閣諸島」とか「竹島」とかちょこっと政治向きの話をして思ったこと。いわゆる「理科系」の学生だから歴史とか苦手だろうという部分は多少、割り引いて、、、。
学生が「そのうち中国が『沖縄は我々の領土』と言い出すかもしれない」と言い出した。次の用事があるので、時間切れになったが、学生の頭の中には我々「本土の人間（やまとんちゅ）」が沖縄戦で多大な犠牲を地元民に強制したこと、戦後も返還後も沖縄に米軍の巨大な戦略拠点基地を配置しつづけ、犠牲を強要し続けていることが深刻な問題としてインプットできていない。歴史的にみても奄美以南の琉球王国に対して薩摩藩が侵略をかけていたことが、維新後の琉球王国（という日本とは異なる文化圏）の「沖縄」としての日本領組み込みの背景になっていることも知らない。現在の米中のパワーバランスのキーポイントの一つは非常にビミョーで、あまり自慢できない歴史的経緯を抱えている。*1
ここでもし中国が「沖縄のみなさん我々の影響下に入ってくれれば、米軍基地を追い出して基地の無い琉球が実現できますよ。日本政府と日本国民を見てごらんなさい、戦時中も含めて70年もみなさんに苦労を押し付けて、今だって基地問題で『自分のところに基地を持ってくるのはいやだ』なんて沖縄の問題から目を逸らしているでしょ。ほんとうにあなた方のことを親身になって考えてなんかいない。あなた方は琉球という独自の歴史をもつ人々なんだから、もう日本に属するのはやめたらどお」なんて甘い言葉で誘ってきたらどうするの？*2
もちろん中国は資本主義の国ではあっても複数の政党からなる政党政治がきちんと成り立っていないので民主主義と呼べるか微妙な国だし、まだ一人あたりの経済水準では日本に劣るし、沖縄は教育制度で日本語の文化圏に長いこと組み込まれているから、沖縄の人もやすやすと中国に組み込まれたいとは思わないだろう。日本の方がまだましと思ってくれるだろう。
でも沖縄の民意として、万が一「本土の日本人とは付き合いたくない。中国とつきあう方がまし」みたいな民族運動が起きたときに、我々本土の人間は彼らに日本に留まってくれと説得できるだろうか？これまでの経緯を考えると説得はとても難しいんじゃないだろうか？
これは沖縄を見る切り口のごく一部だし、かたよった意見の一つにすぎないが、君はそういうところまでいろいろと知って、いろいろと想像して、議論を考えた上で「沖縄県は日本領」ということを考えたことがあるかい？ネットやマスゴミの表層的な議論のフォローで終わってないかい？
歴史とは「学校でならったペーパーテスト用の知識の羅列」ではないんだよ。世界の情勢を多面的に見て理解するためのパズルのピースなんだ。
