図形の拡大縮小平行移動
高校くらいまでは、数学の問題は、途中の解き方はどうあれ、答えがひとつに決まるケースが多い…ような気がする(若干、弱気である)。国語の問題と比べてとても明快に白黒の決着が着く。「だから数学が好きだ」という人もいるだろう。でも、こんな簡単な例題でも答えは「ひとつ」に決まらない。というか、そんな問題は意外に簡単に作れてしまう。
のグラフはのグラフをどの方向にどれだけ拡大(あるいは縮小)、平行移動したものか?
これには「だからを軸方向に(軸を中心として)2倍拡大したものである」と答えても良いし、「であるからとなる。だからを軸の負の方向にだけ(あるいは「正方向にだけ」)平行移動したものである」と答えてもよい。どっちでも良いのかと訊かれたら「どっちでもよい」と答えるしかない。*1
なんでこんな話を振るかというと、「答えがひとつに決まらないこと」に免疫が無い人*2が結構いる…ような気がする(かなり、弱気である)…からである。そんな人に試験中にこんな問題をだしたら、一発でキモチが不安になって迷走を始める。
逆にこんな話を振ると「いやいや、答えが決まらないことなんて世間に一杯ありますよ。数学でもそうだったんですね」とおっしゃる向きもあろう。でもあまり安直な賛同は欲しくない。というのも、言いたいことは
確かに「答え」はひとつに決まらないのだが、「正しい答えにたどり着く論理、計算」は必ずある。答えがあいまいになるなら、あいまいにならざるを得ない理由だってある。*3そのことをきちんと順序だてて説明する練習が、これまでの高校までの数学教育には不足していたのではないか…と、我が身の履歴を振り返って思うのである(とても、弱気である)。
入試の数学が算術に過ぎない感じがして嫌なのである。
*1:もう少しひねくれるととも書けるので「軸方向に倍したグラフを、軸負方向にだけ平行移動したもの」とも言える。高校時代のボクなら(時間にゆとりがあれば)試験の答案に絶対書いていただろう。
さて、ひとつに決まらないからと言ってそこで止まってはイケナイ。「これらの複数の答えの間に共通の性質はないのだろうか」と問いかけ、探してみる必要がある。実は「見た目のバラバラさを乗り越える宝探し」が大学の数学の醍醐味のひとつなのである。
*2:とりわけ受験が済んで大学生になったばかりの頃の人に免疫の無い人が多い。
*3:「安直な賛同は欲しくない」と書いた理由は、例えばマス・メディアの流す情報を見ても分かるように、割と簡単にはっきりさせられるところをいい加減に済ませたりすることが多いからだ。答えを求める努力を放棄したような人には賛同して欲しくない。