過去の学習指導要領で「有効数字」を検索してみる

以下、調べ掛けの項目。今後も気がついたら加筆や修正をしていく予定。
有効数字の計算法については 有効数字の求め方の例題:パチンコ玉の直径をノギスで1回だけ測って体積を求める - あらきけいすけの雑記帳

学習指導要領では…

site:www.nicer.go.jp/guideline/old/ 有効数字 - Google 検索
site:www.nicer.go.jp/guideline/old/ 有効数字 誤差 - Google 検索
終戦直後の指導要領では…

統計に現われる数値を,測定によって得られる数値に関係をもたせて,有効数字に関する観念を明らかにしなければならない。一つの物の体積を測ろうとする場合でも,測定に用いる物指の最小目盛が1センチか1ミリか1/20ミリか1/100ミリかによって,測定値をどこまで信用してよいかが定まるわけである。面積や体積等を計算する場合に,測定値の有効数字が幾けたまでであるかを念頭におかないと,徒らに無意味な複雑な計算をして,不必要な労力を使ったり,また目的に応じて物指の精度を吟味したりする手段を忘れるものである。
昭和22年度 学習指導要領 算数科 数学科編, 第4章 算数科・数学科の指導法
学習指導書のような記載も、このときは学習指導要領の中に含まれているようである。これが平成元年度には…
(3) 目的に応じて資料を収集し,それを表,グラフなどを用いて整理し,代表値,資料の散らばりなどに着目してその資料の傾向を知ることができるようにする。
ア 度数分布の意味とヒストグラムの見方
イ 相対度数の意味
ウ 平均値や範囲の意味
エ 相関図と相関表の見方
〔用語・記号〕
  有効数字 近似値 誤差 度数 階級
 3 内容の取扱い
…途中略…
(5) 内容のCの(3)については,日常の事象などに関連した実際の場面に即して扱うよう配慮するものとする。
平成元年3月 中学校学習指導要領 第3章 中学校, 第3節 数学, 第2 各学年の目標及び内容, [第2学年] 2 内容, C 数量関係
また,これに関連して,近似式,誤差,有効数字などに触れることは差し支えないが,実例により簡単な場合を取り扱うものとする。
平成元年3月 高等学校学習指導要領, 第4章 高等学校, 第4節 数学, 第2款 各科目, 第6 数学C
となっていて全体として「後退している」印象を受ける(指導書の方も見ないと詳しいことは分からないが)。というわけで日本はかなり「反・理科」教育を進めている国家となっている。

誤差を理科ではなく数学で扱うのは「伝統」のように思われる。

Google先生の「キャッシュ」がこのサイトの全ページを網羅しているかどうかはわからないのだけど、URLのディレクトリ名を見ると昭和45年度から平成元年度に年号がジャンプしている(昭和53年度, 平成10年度はどうなってるの?)

Google先生ポピュリズム的なカウントをしてもらった

概要:これも調べかけなのだが、グーグル的カウントから想像すると、日本では教師も含めて「有効数字」を「誤差」「計測」との関連で捉えていないし、学んでいないのではないか。「有効数字」がペーパーテスト的な知識でしかないのではないか?
有効数字というのは大雑把には「それ以上こまかい桁のことは正確には分からない(だから言っても無駄)」という意味で、「計る」という行為とセットになっており、その計測がどこまで信頼できるのかという「誤差」の概念とセットになっている…とボクは信じているのだが、グーグル先生にAND検索をお願いしてみた結果は次のようなものであった:
有効数字 - Google 検索:約970万件, 誤差 - Google 検索:約770万件, 有効数字 誤差 - Google 検索:約3万件, 有効数字 計測 - Google 検索:約5万件, 有効数字 計測 誤差 - Google 検索:約0.9万件, 有効数字 測定 - Google 検索:約11万件, 有効数字 測定 誤差 - Google 検索:約3万件
比としては100:1程度かそれ以下である。「有効数字 誤差 計測」にいたっては1000:1である。「有効数字」に対する関心の高さに対して、「有効数字 計測」の関心の無さが際立っているように思われる。これに対して英語で検索をかけてみるとおよそ10:1程度である
significant figures - Google 検索:約5050万件,
significant figures error - Google 検索:約560万件,
significant figures measurement - Google 検索:約650万件,
significant figures measurement error - Google 検索:約420万件
日本語の「誤差」「計測」が日常語とは考えにくく利用頻度が低いであろうこと、英語の "error", "measurement" が日常語的なので利用頻度が高いであろうことを考えに入れたとしても、日英の差があまりに開きすぎている。
これが「桁」とのAND検索になると、こんな結果になる
有効数字 桁 - Google 検索:約640万件(約970万件中), significant figures digit - Google 検索:約530万件(約5050万件中)
このAND検索が比較の対象として妥当かどうかは分からないのだが、日本のページは割合から考えると、かなり「有効数字と桁の関係を気にしすぎ」なのではないかという印象を持った。有効桁なんて何を使って計ったのか次第なんだけど、やたら「紙に書かれたものの桁数」ばかりを気にしているんじゃないか。

リファレンスとか、いろいろ

Uncertainty as Applied to Measurements and Calculations
考えてるとよくわからなくなる有効数字 2ちゃんのすれ。落ちるまで時間掛かりそうだから貼っておく。ときどき計測の精度の話での誤差の話と、それを多数のデータを用いて抑え込むテクニックである統計的処理による母集団の推定の話がごっちゃになっているな。

つまらん暫定的なコメント

日本語ウェブユーザの間では「有効数字」が「測定」の文脈から離れすぎで、机上の算術と化しているのではないか。これは理科がペーパーテスト用の知識でしかなく、リアル・ワールドとのつながりを失っていることの症状のひとつではないか?
Googleで「有効数字」を調べると、有効数字の本質の理解からますます遠ざかる。ウェブ/グーグル的なポピュリズムが反理系的バカの再生産に寄与するのではないか?