経済産業省の「社会人基礎力」はメンバーシップ型雇用を前提としているのではないか?

自分のための覚書。経済産業省の提唱する「社会人基礎力」*1の定義を見ると、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」という非常に抽象的な三つのスキルからなっている。つまりここに挙げられた能力は労働者のジョブの内容に依存せず、また具体的なスキルトレーニングの指針を欠いたものになっているように思われる。このような具体的な指導計画の立てにくい能力を全面に押し出す背景には、日本の雇用がメンバーシップ型雇用*2であり、正社員として会社に雇用されると原則として特定の技能のジョブだけするわけではなく、多くの部署を経験して昇進するようなシステムになっているからではないか。つまり経済産業省のこの能力指針は「正社員採用」を前提とした適用範囲の狭い指針ではないか。高度経済成長期に形成されバブル期までに成熟し*3、そして現在、制度疲労のために雇用の状況をいびつにしている日本の労働慣行を補強しようとする将来性の無い提唱ではないか。