連立一次方程式の解き方
線形代数の講義のために、高校までの連立一次方程式の解法でネット上に出回っているものがどのようなものかを調べていて、次のページに出会った。ベストアンサーに選ばれた回答が間違っている。
数学の問題です。「aを定数とする時、連立一次方程式ax+y=aと 9x+ay=3aを解け。... - Yahoo!知恵袋
答えの「解なし」の部分の処理で間違えている。高校までで「解なし」の処理が適切に教えられていないせいだろう。この問題は掃き出し法を用いて説明する方がいいかもしれない。
まず(1)より
これを(2)に代入して
この(2')式は「ベストアンサー」の(1)式なのだが、ここで「ベストアンサー」は処理を間違えている。
この式の解は
- case 1: のとき、に何を代入しても(2')が成り立つ;
- case 2: のとき、.
この case 2 はさらに細かく分類されて
- case 2.1: のとき、;
- case 2.2: のとき、という矛盾した式がの値によらず現れる;
これにあわせて計算を続けると
- case 1: のとき、(1')よりはを満たしていればよいので、である、ここでにどんな数を代入しても元の連立方程式のイコールが2個とも成り立つ。
- case 2.1: のとき、を(1')に代入して;
- case 2.2: のとき、に何を代入してもこの二つの与式を同時に満たすことはない。つまり「解なし」
だから「解」は
- のとき解は存在しない。
- のとき解は (ただしは任意の数)。
- のとき、 .
大学で学修する知識で解説をすると, のときに元の連立一次方程式を与える行列は特異となる。右辺のベクトルが核空間の成分を持たない場合(のとき)には、この連立一次方程式は解けて、その一般解にはこの特異行列の核空間の成分が必ず含まれる(図形的には(1),(2)がxy平面上の同一直線を表す)。もし右辺のベクトルが核空間の成分を持つ場合(のとき)には解が存在しない(図形的には(1),(2)がxy平面上のの2本の平行線を表すので、交点がない)。もちろんこのような知識がなくても、上記のように高校までの知識で解くことができる。
「ベストアンサー」は場合わけをした後でxy平面上に実際に図形を描いて確かめていなかったのだろう。