連立一次方程式の答案のテンプレートを考えてみる

行列が特異な場合の答案の書き方込みの解き方の雛形を考える。いわゆるGauss-Jordanの前進消去、後退代入の解き方を「中学・高校的な」答案のフォーマットに乗せることが目標である。次のことを教えるための最初の着手点として:

  • 連立一次方程式A\vec{x}=\vec{b}に対して、行列Aが特異|A|=0な場合には、解に核空間の分だけの自由度が生じること。(このエントリの範囲内ではゼロ固有値が縮退している場合は考えていない。)
  • 方程式が解を持つためには右辺のベクトル\vec{b}が核空間の成分を持たないこと。
  • 逆に核空間の成分を持てば解無しとなること。
  • 核空間の成分を持たないことを判定するためには、右辺のベクトルを行列の左固有ベクトル {}^{t}\vec{e} s.t. {}^{t}\vec{e}A=\vec{0} との内積を取ってゼロになること。

これらの中には線形空間の基礎概念として重要なものがいくつも含まれている。

2元連立一次方程式

連立一次方程式\left\{\begin{array}{ll}x+2y=3&\cdots(1)\\2x+4y=6&\cdots(2)\end{array}\right.の解を求めよ。
(1)式よりx=-2y+3\cdots(1)^{\prime}を得る。
これを(2)式に代入して\underline{x}を消去して、\underline{y}の式を求める
  (2)\cdots2(-2y+3)+4y=6\\\Longrightarrow0y+6=6\cdots(2)^{\prime}
となる。\underline{y}の式(2)'は任意の\underline{y}について成り立つので*1、求める解のyの値は
  y=t  (tは任意の数)\cdots(2)^{\prime\prime}
となる。これを(1)'式に代入して、求める解のxの値は
  x=-2t+3\cdots(1)^{\prime\prime}
となる。以上をまとめて与えられた連立一次方程式(1), (2)の解は
\left\{\begin{array}{l}x=-2t+3\\y=t\end{array}\right. (tは任意の数)である。

3元連立一次方程式


連立一次方程式\left\{\begin{array}{ll}x-2y+3z=-7&\cdots(1)\\2x+3y-z=7&\cdots(2)\\5x+4y+z=7&\cdots(3)\end{array}\right.の解を求めよ。
(1)式よりx=2y-3z-7\cdots(1)^{\prime}を得る。
これを(2),(3)式に代入して\underline{x}を消去して、\underline{y,z}の式を求める
  (2)\cdots2(2y-3z-7)+3y-z=7  \Longrightarrow  7y-7z=14\cdots(2)^{\prime}
  (3)\cdots5(2y-3z-7)+4y+z=7 \Longrightarrow 14y-14z=28\cdots(3)^{\prime}
(2)'式よりy=z+2\cdots(2)^{\prime\prime}
これを(3)'式に代入して\underline{y}を消去して、\underline{z}の式を求める
  (3)^{\prime}\cdots14(z+2)-14z=28 \Longrightarrow 0z+28=28\cdots(3)^{\prime\prime}
となる。\underline{z}の式(3)''は任意の\underline{z}について成り立つので、求める解のzの値は
  z=t  (tは任意の数)\cdots(3)^{\prime\prime\prime}
となる。これを(2)''式に代入して、求める解のyの値は
  y=t+2  (tは任意の数)\cdots(2)^{\prime\prime\prime}
となる。これと(3)'''式を(1)'式に代入して、求める解のxの値は
  x=2(t+2)-3t-7 \Longrightarrow x=-t-3  (tは任意の数)\cdots(1)^{\prime\prime}
となる。以上をまとめて与えられた連立一次方程式(1), (2), (3)の解は
\left\{\begin{array}{l}x=-t-3\\y=t+2\\z=t\end{array}\right. (tは任意の数)である。

*1:ここで、例えば 0y+4=8 のようになれば「任意のyで成り立たないので解無し」という答案になる。