これってあんまりだよ、竹内先生

あー、また毎目新聞フルボッコ*1などと横目で見ながら、「大人のための科学力検定」(http://r25.jp/ad/special_02/nikon_20081117/kentei.html*2)を始めたのだが、「基礎編」の「宇宙」の1問目で次の問題に当たって萎えてしまって、それ以上のやる気を失った

地球が自転しているから昼と夜がある。もしも自転が止まったら、どうなる。

  1. 高熱で地表がドロドロに溶ける
  2. 急激に冷えて地表が凍る
  3. 地球全体が膨張し始める
まあ「自転が止まる」という問題設定自身が現実的にはあり得ないので、何か特定の物理的な量だけが保存されたらどうなるかという問題だ。ありがちな答えは「慣性」つまり地球に固定されていないものの運動量が保存されて、「地表の物が東側に飛ばされる」「猛烈な西風が起こる」みたいな話を続けるのが小学校的にはおやくそくなのだが、今回の「正解」はこうだった
正解は1.

地球は時速1667kmの超音速で自転している。自転が突然止まったら、地球上のあらゆるものが超音速で回転方向(東方向)に投げ出されてしまう。ゆっくり止まった場合は、自転に使われていた運動エネルギーが熱に変換される。つまり地表は灼熱地獄になって、ドロドロに溶けてしまうのだ。

アタマ痛い。今回は「(多分、地球の)回転の運動エネルギー」を「保存」量として解けという話だったみたい。いい加減にしてくれと言いたくなる。
そこで本当に灼熱地獄になるかどうか計算をしてみた。
まず地球の回転の運動エネルギーだが、地球の半径が r=6.4×106[m], 質量が M=6.0×1024[kg]*3, 回転角速度が ω=2π[rad]÷86400[sec]=7.3×10-5[rad/sec]なので、回転の運動エネルギーを質量一様の球で近似して求めると E=(2/5)Mr2ω2=0.4×(6.0×1024)×(6.4×106)2×(7.3×10-5)2=5.2×1023=>×1029*4[J]である。
これを何と比較したものか考えたのだが、地球に降り注ぐ太陽光と比較してみることにした。
地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーは 1.4×103[W/m2] であり、地球全体では 1.7×1017[W] であるから*5、1日あたり 1.7×1017[W]×86400[s]=1.5×1022[J] となる。したがって地球の回転の運動エネルギーは大雑把に見積もって、地球に降り注ぐ太陽エネルギー 35 日=>10万年*6分程度これが一気に地球の地表面付近にだけ集中すれば「地表は灼熱地獄」もあり得るかもしれないが、地球全体に満遍なく分配されたら大した温度上昇にならないのではないかと思った
…のだが、地球の熱容量をどのように見積もればいいのか分からなかったので、ここまで。「灼熱」はちょっとありそうもないような気がした。
[2012.9.29]あちゃー。計算ミスってた。...orz tfi72さま、ご指摘ありがとうございます。