テイラー展開の図形的な意味

数学を現実の問題に応用するとき、関数の式の形が具体的に分ることはまずありません。
コンセントの電圧のグラフは三角関数 sin, cos で書けますが、このように式の形がはっきりと分っている例は現実にはほとんどありません。テイラー展開とは、未知の動きをするもののグラフの「形状」を予想し、具体的な数値を求める手段のひとつなのです。
テイラー展開とは 大雑把に言えば、グラフy=f(x)の値を求めるために、そのグラフに近い形の 1次, 2次, 3次,…関数をきちんと計算するための方法です。

図1:元のグラフy=f(x)
http://ud037.are.ous.ac.jp/q030626a.jpg

まずテイラー展開の公式をf'の項までで考えてみよう:


f(x)f(a) + f '(a)(x-a).
この式は図形的には、元のグラフをx=aの近所だけxの1次関数(直線)で近似したことになる(図2を見よ)。接点の近所では元のグラフと直線がともに「右上がり」という特徴を持っている。

図2:元のグラフy=f(x)y=f(a) + f '(a)(x-a)を重ねる
http://ud037.are.ous.ac.jp/q030626b.jpg


元のグラフをx=aの近所だけxの2次関数で近似する。


f(x)f(a) + f '(a)(x-a) + \frac{f ''(a)}{2!}(x-a)^2
これを重ね描きをしてみるとf(x)のグラフがx=aの近所で「上に凸になっている」という雰囲気まで再現されている。(もちろん遠いところはぜんぜんちがう。)

図4:元のグラフ y=f(x)y=f(a) + f '(a)(x-a) + \frac{f ''(a)}{2!} (x-a)^2 を重ねる
http://ud037.are.ous.ac.jp/q030626c.jpg

テイラー展開を3次まで実行することは、図形的には元のグラフをx=aの近所だけxの3次関数で近似することになる。


f(x)f(a) + f '(a)(x-a) + \frac{f ''(a)}{2!} (x-a)^2 + \frac{f^{(3)}(a)}{3!} (x-a)^3
すると結構広い範囲でグラフの形が増減や凹凸まで含めて再現される。少なくともこの場合はね(^^;

図3: 元のグラフ y=f(x)y= f(a) + f '(a)(x-a) + \frac{f ''(a)}{2!} (x-a)^2 + \frac{f^{(3)}(a)}{3!} (x-a)^3 を重ねる。
http://ud037.are.ous.ac.jp/q030626d.jpg

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