無限級数によって定義された指数法則を満たす関数の覚書

厳密な収束性云々の話を抜きにしても、大学初年度程度の微積分における指数関数の話をここからはじめるのはムチャな気がするが、テイラー展開の話のあたりでこれに触れないのも芸が無いような気がする。

無限級数f(x):=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\cdotsで定義された関数の積は
\begin{array}{rl}f(x)f(y)&=(1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\cdots)(1+y+\frac{y^2}{2!}+\frac{y^3}{3!}+\frac{y^4}{4!}+\cdots)\\&=1+(x+y)+\left(\frac{x^2}{2!}\cdot1+x\cdot y+1\cdot\frac{y^2}{2!}\right)+\cdots\end{array}

となるのだが、この展開のk-次の項は
\begin{array}{l}\frac{x^k}{k!}+\frac{x^{k-1}}{(k-1)!}\frac{y^{1}}{1!}+\frac{x^{k-2}}{(k-2)!}\frac{y^{2}}{2!}+\cdots+\frac{x^{2}}{2!}\frac{y^{k-2}}{(k-2)!}+\frac{x^{1}}{1!}\frac{y^{k-1}}{(k-1)!}+\frac{y^{k}}{k!}\\=\frac{1}{k!}\left(x^k+\frac{k!}{(k-1)!1!}x^{k-1}y^{1}+\frac{k!}{(k-2)!2!}x^{k-2}y^{2}+\cdots+\frac{k!}{2!(k-2)!}x^{2}y^{k-2}+\frac{k!}{1!(k-1)!}x^{1}y^{k-1}+y^{k}\right)\\=\frac{1}{k!}(x+y)^k\end{array}

となるので
f(x)f(y)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(x+y)^k}{k!}=f(x+y)

となり指数法則を満たすことが(ラフスケッチに過ぎないけど)分かる。この計算で面白い点は変数x,yが実数に限らないこと。
[蛇足]指数法則から導くことが出来る関係式はf'(x)=f'(0)f(x)。これに対し、上で与えたf(x)f'(x)=f(x)を満たす。この指数関数の底にeの文字を割り当てたのはEulerだが、この文字を選んだ根拠ははっきりしないようだ(e (mathematical constant) - Wikipedia, 日本語のこの項目は充実していないと感じる)。